福井には「天神様信仰」という慣習があって、男の子がいる家では1月25日に床の間に天神様の掛け軸を飾るんですが、他県から来た人には「何それ?」って驚かれる事があります。
最近もその話題で盛り上がりました。
自分たちにとっては当たり前の事なのですが、改めてちゃんと説明できるように調べてみました。
ザックリいうと。。。。。
菅原道真は昔から学問の神様として「天神様信仰」されている
福井の幕末の藩主が学問を奨励するために「天神講」を広めた
長男が生まれると母方の実家から掛け軸が届く
飾る時期や片づける時期は決まっている
お供え物は焼きカレイ
福井県民の一部の人は天神講を全国的な習わしだと思っている人も多い
詳しくご紹介します!
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目次
そもそも天神様信仰って何?
菅原道真は平安時代に藤原時平の陰謀によって大宰府(現在の福岡県)へ左遷され失意のうちに亡くなったが、その後都では疫病がはやり、日照りが続き醍醐天皇の皇子が相次いで病死。さらには清涼殿(天皇の住まい)が落雷を受け消失という恐ろしい事態に。
これらが道真の祟りだ!!と恐れた朝廷は、道真を天満大自在天神(てんまんだいじざいてんじん)として祀(まつ)り、道真の怨霊を鎮めるために京都の北野天満宮、太宰府天満宮、大阪天満宮を建立。
時代が進んで鎌倉時代になると怨霊として恐れられることは少くなり、なぜか慈悲の神、正直の神、冤罪を晴らす神、和歌・連歌など芸能の神、現世の長寿と来世の極楽往生に導く神、海難除けの神、として信仰される。
そして江戸時代以降は、道真が生前優れた学者・歌人であったことから、学問の神としても盛んに信仰されるようになった。
現代では受験シーズンになると太宰府天満宮などには合格祈願の人が押し寄せるのは有名な話。
福井で天神様信仰が広まってるのは何故?
藩主が奨励
教育に熱心であった十六代福井藩主松平春嶽が将来を担う子どもたちが学問に打ち込むよう、一年の初めに天神様をおまつりするよう推奨して、菅原道真の命日にちなんで、毎月25日は天神講としました。
そして特に1年の始めの天神講である1月25日には床の間に天神様の掛け軸を飾ることを広めたため庶民に定着しました。
天神様飾りってどこの地域で?
主に北陸地方の富山県、福井県。
長野県の一部、あと島根県と鳥取県、愛知県豊橋付近や静岡県西部の東三河地区です。
北陸の福井と富山だけに広まってるけど間に挟まれた石川は?
福井で広まった天神様。その習慣を富山の薬売りが広めたとされていて、富山には天神飾りの習慣が残っています。
逆に石川(加賀藩)前田家は先祖が菅原氏だそうで、実際に天神社・天満宮が他地域に比べて大変多い。
なのに天神飾りの習慣は残っていません。
不思議ですね~。
理由は、加賀藩での天神飾りと言えば高価な木彫りの像が一般的だったからちょっと庶民には広まらなかった。
木彫りの人形に比べると庶民にも手軽な掛け軸という形を広めたからこそ、福井と富山では現在も天神飾りが続いているって、面白いですね。
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母方の実家から届く
今も福井では家に男の子が誕生するとそれ以後の正月は床の間に天神様の掛軸を飾る慣習が残っています。
その掛軸は、母方の実家から送られるのがならわし。
(女の子が生まれるとお雛様が贈られます)
ちなみに結局女の子ばかりだった我が家には天神様は無いので、知人のお宅のお正月の天神様飾りの写真をご紹介します。祖父、父、息子の3代の天神様飾りです。
凄く立派ですね。
最近の少子化、未婚率の高まり。。。。を考えると、残念ながら今後は少しづつ減っていくとは思います。
それでも、毎年の1月25日にこうやって親子3代それぞれの天神様が並んだ床の間飾りを見ながら家族の絆を感じられるなんて、とても贅沢で幸せなことだと思います。
福井県の子どもの学力テストの成績がいつも全国トップクラスなのはこういう生活習慣も影響していると思います。
天神様の祝い方
飾り始めと片付ける日は決まっています
飾る時期は飾り始めは「終い天神」といって12月25日からで、家族全員で「二拝二拍手一拝」でお参りします。
片付けるのは「初天神」の新年1月25日の夜か次の日の朝が基本ですが、しまう際はカビやシミを防ぐためにも、天気の良い日に陰干ししてからの方が望ましいので良さそうな日に片づけましょう。
ただし、受験や就職などその家の男の子にとって大事な願い事がある場合は、それまでお飾りしていても良いです。
掛け軸の値段ってどれくらい?
価格帯は6万〜200万円超まで幅広いけれど良く売れるのは30万円前後。
近年は床の間のないマンションなどに向けて額に入った掛け軸代わりのモノもあるらしいですから時代ですね。
でもマンションでも飾ろうとするところに、父母や祖父母の次の世代への愛情を感じます。
お供え物は焼きカレイ
さらに福井では1月25日に天神様に焼きレイを供える風習があります。そしてその日の晩御飯におさがりの「焼きカレイ」を家族みんなで食べます。
1月25日の福井のお魚やさんやスーパーの魚売り場には、土用の丑の日の「うなぎのかば焼き」の様にズラーっと焼きカレイが並ぶのは、ちょっと壮観です。
私の母が他県から嫁いできて、一番最初はびっくりした、と言ってました。
なぜ焼きカレイなのか?はお魚やさんに聞いたりして調べましたが正確な理由はわかりませんでした。
道真の好物だったという説もありますが、お頭付きで形もきれいなおめでたい魚の代表といえば鯛ですが、なかなか手に入りにくい。
そこで、この時期に脂がのっているカレイにしたら見栄えも良くていつの間にか定着した。
と考えます。
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まとめ
福井県民の一部(北部)の人は天神講を全国的な習わしだと思っている人も多いので、他県の人から「そんな話初めて聞きました」と聞くとビックリします。
逆に他県から嫁いで出来た人はそのギャップに驚くわけです。
グローバル社会になろうとしているこの時代に、このマイナーな慣習を「時代遅れ」と笑うのもありだけれど、子供の成長を家族や親族みんなで願うって素敵な事だと思います。
パワースポットや神社の絵馬奉納が人気があるように、不安がいっぱいの世の中だからこそ、心のよりどころとして残していきたいとも思います。
地域によってそれぞれ独特な慣習ってあると思うのですが、今回福井の「天神様飾り」の由来をちゃんと知って愛着もわきました。
これから準備を始める方にも知ってもらって少しでも役に立ったらうれしいです。